床の間

 私たち日本人にとって「床の間(とこのま)」は身近でなじみのあるものですが、はたして皆さんはどれくらいの知識をお持ちでしょうか?今回は「床の間」について紹介しましょう。


床の間の歴史 / 「床の間」の構成・部材 / 床 / 床柱(とこばしら)/ 書院 / 床脇 / いろいろな「床の間」 / おわりに



1.床の間の歴史


 「床の間」の歴史は、室町時代に生まれ、 安土・桃山から江戸時代にかけて完成したと言われています。

室町以前は「床の間」を形造る床、書院、違い棚はそれぞれ別々 の部屋に設けられていましたが、それらを一体化したのが 「床の間」の始まりと言われています。

その当時の「床の間」は武士や貴族の一室に設けられ、 それが一つの正式なかたち(書院床の間:本床の両側に それぞれ書院と床脇を設けたスタイル・図1)として広まったそうです。

その後、数寄屋(すきや)(茶室)の流行とともに、 材料(部材)やデザインなどに自由な発想を取り入れた 数寄屋風書院床が登場し、以後様々なタイプの「床の間」 が造られるようになり、貴族や武士などの上流階級以外 の庶民の間にも「床の間」を設けることが広がっていったそうです。

 現在では、「床の間」は権威の象徴としての意味合いよりも、 和風住宅や和室の内装としての装飾的な意味合いで作られており、 住宅の大きさや間取りなどに合わせてバランスのとれた「床の間」 が作られます。



2.「床の間」の構成・部材


 ここでもっとも格式のある「床の間」である本床形式を例に その構成や部材を紹介します。

 床(ゆかの部分)の内部を一段高くして畳や地板などを敷き、 その前面には漆塗りなどを施した横木(床框、とこかまち) を付けます (この形式を本床といいます)。

上部には床框と平行に横材(落とし掛け、おとしがけ) を取り付け、その上を壁(小壁)にします。

これに「床の間」に接した障子窓(書院)と飾り棚(床脇) を加え、床と床脇の間に床柱が配されます(図1参照)。



3.床


 床には本床のほか蹴込み床(けこみどこ。本床をやや略した床で、 床框がなく畳と地板の間に蹴込み板を入れて、地板の木口を直接見せたもの)や、 踏込み床(ふみこみどこ)(敷込床)(しきこみどこ。蹴込み床より更に本床を 略した床で、段が無い状態の床)などがあります(図2参照)。



4.床柱(とこばしら)


 床柱は床と床脇の間に使われる柱で、 「床の間」のなかで最も目立つ部材です。また、 和室のなかでのシンボルでもありますから和室全体との調和などを 考えて、様々な樹種や木肌が使用されています。

現在では、銘木と呼ばれる国産優良材や輸入材、 そのほか化粧ばり集成材も使用されています。

 床柱に使用される主な樹種としては針葉樹のスギ、 ヒノキ、ツガ、ヒバ、イチイ、コウヤマキ、アカマツ、 タイワンヒノキ、カラマツ、広葉樹のケヤキ、カエデ、 エンジュ、コクタン、シタン、カリン、そのほか竹などがあります。



5.書院


 その起源は僧侶がお経を読むための机と光を入れる 障子窓を設けたことと言われています。

書院は当初は実用的なものだったようですが、現在では 装飾的な要素が強く、書院があると「床の間」のみならず 和室全体がぐっと引き締まります。

書院の構成は図3に示すとおり障子、書院欄間(らんま) 、書院地板、地袋などとなっています。



6.床脇


 一般的には床脇棚と袋戸棚によって構成されます。

正式な書院「床の間」では床脇棚に「違い棚」を使いますが 床脇棚には”床脇百棚”といわれるほどたくさんの棚の種類が あり、通り棚、釣り棚、箱棚などがよく見られます(図4参照)。

また、最近では床脇を無くし、代わりにタンス置き場や仏壇、 押入、または障子窓などを設けるケースが増えているようです。



7.いろいろな「床の間」


 代表的なスタイルの「床の間」を紹介しましたが、 それ以外にも様々なタイプの「床の間」があります。 そのなかのいくつかを図5で紹介しましょう。



8.おわりに


 以上「床の間」について説明してきましたが、 これから家を建てようと考えている方、または建て替えようと 考えている方は、「床の間」の材種や手法にこだわってみるの も楽しいのではないでしょうか。

文献:「和風住宅」新建新聞社(1995)









「大きな目小さな目」(全国版)
(農林水産消費技術センター広報誌)
1997年11月 第36号


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