バリアフリー住宅

 増え続ける高齢者。世界に類を見ない速度で高齢化が進む日本。21世紀の住まいは、高齢者対応型になるといわれています。なぜならば、4人に1人が65歳以上になり、一般的な住宅でも高齢者が住むことが前提となるからです。  お年寄りが快適な日常生活を送ることができる住まいを考える上で、「バリアフリー住宅」という概念が生まれてきました。今回は、この「バリアフリー住宅」について考えてみたいと思います。


バリアフリー住宅とは / 何故必要なのか? / どんな配慮が望ましいか? / おわりに



1.バリアフリー住宅とは


 「バリア」は「障壁」、「フリー」は「ない」という意味ですから、 『バリアフリー住宅』とは『障害がなく自由に動き回れる住宅』のことです。 いいかえれば、『高齢化に伴い、 身体機能が低下した場合でも、 支障なく住み続けられるように配慮した住まい』のことです。



2.なぜ必要なのか?


 厚生省によると、平成6年に 住宅内の事故で死亡した 65歳以上の人は5,017人であり、同じ65歳以上の交通事故死亡者 4,731人よりも多くなっています。 高齢者になると、体が思い通り に動かなくなるため、風呂で溺れたり、居室で転倒して頭を打つなど 不慮の事故で亡くなる例が目立ちます。住まいが高齢者に配慮されて いれば、未然に防げた事故も少なくありません。  また、死に至らなくても、部屋の構造が原因で思いがけない事故を 起こすことも少なくありません。東京消防庁が平成6年に救急車を 出動した高齢者の不慮の事故は6,060件です。目立ったものは 廊下・階段などでの転倒や転落事故 であり、約7割を占めています。 転倒は各年代に共通とはいえ、和室の上がり口など何でもないような 場所での転倒が目を引きます。



3.どんな配慮が望ましいか?


 トイレのドアーひとつ取っても工夫次第で危険を回避する ことができます。トイレのドアーは内開きが落ちつく(特に女性?)とはいえ 、中で人が倒れていると開きません。お年寄りはトイレで倒れることが 多いだけに気を付けてあげたいものです。高齢者の住まいは 危険を回避する ことが重要なポイントとなります。一戸建て住宅の場合には次のことが 考えられます。(以下住宅金融公庫の基準を一部参考にしました。)

◆段差の解消

 主な居室・トイレ・洗面所・脱衣室の床や出入口及び これらをつなぐ廊下の床は段差のない構造とすること。 (90mm以上の段差は段差の解消とは見なさない。)

◆出入口の幅

 高齢者などの寝室のある階の全居室・トイレ・洗面所・ 脱衣室・玄関ホールをつなぐ廊下の幅は78cm(柱の出た部分は75cm )以上とすること。

◆浴室の広さ
 浴室の壁の長さの短い方を内法で130cm以上 とし、面積は2u以上とすること。

◆階段の形状

 階段の各部の寸法は次の式を満たすようにすること。

ア 踏面 ≧ 19.5cm
イ 蹴上げ/踏面 ≦ 22/21
ウ 55cm ≦ 踏面+2×蹴上げ ≦ 65cm

◆階段の勾配
 階段の勾配は、約45度以下にすること。

◆手すりの設置

  階段・浴室・トイレ・玄関には手すりを設けること。

◆間取り

 高齢者などの寝室とトイレは同一階に配置すること。 (居室・台所・浴室など生活空間を同一階に配置することが望ましい。)

◆その他

  • 大理石のような滑りやすい素材の使用は避ける。
  • 上がり框 はできるだけ低くする。
  • 寝室とトイレは隣り合わせにする。
  • 浴槽の高さを低くする。(30〜40cm程度)



  • 4.おわりに


     本格的な長寿社会の到来を迎え、住宅にも高齢者への配慮が 欠かせなくなっています。お年寄りに安らぎを与えるには木をふんだんに 使った木造住宅が望まれます。住まいの価値は人がそこに住み、日々に営み を繰り返すことによって、初めて生み出されるものです。お年寄りに優しい 住宅は乳幼児や身体障害者という生活弱者にとっても優しい住宅です。

     人は、好むと好まざるに係わらず、いずれは高齢者になります。 お年寄りをいたわる心は、将来の自分をいたわることに繋がるの ではないでしょうか?








    「大きな目小さな目」(全国版)
    (農林水産消費技術センター広報誌)
    1996年11月 第30号


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