木材と水分(3)


木材の強度と水分の関係はどうなっているの? / 木を乾燥させる必要性は? / JAS製品の水分(含水率)はどうなっているの?




木材の強度と水分の関係はどうなっているの?

 木材の強度は、その1でお話ししました繊維飽和点を境に変化します。すなわち、繊維飽和点を超えた含水率状態では、細胞壁の結合水が飽和しているとともに、細胞内の空腔に自由水が含まれています。強度的性質に影響を及ぼすのは、結合水であり、自由水ではありません。従って、繊維飽和点以上の含水率では、いくら自由水が増大して高含水率になっても、各種の強度的性質には変化が認められません。
 これに対して、繊維飽和点より含水率が低くなるにつれて細胞壁内の結合水が次第に少なくなり、木材組織の凝集力が増大して各種の強度的性質は増加します。
 木材の含水率が強度に与える影響は、多くの試験によって明らかになっています。






含水率1%変化に伴う強さの変化

変化(%)
曲げ強さ4
曲げ比例限応力5
縦圧縮強さ6
縦圧縮比例限応力5
横圧縮比例現応力5.5
せん断強さ3
硬さ(木口面)4
(縦断面)2.5

比例限応力: 曲げや圧縮等の力が 外部から加わると、木材 は変形しますが、外部か らの力と変形との間には、 初期において直線関係 が成立します。
 この直線関係が成立す する範囲の、外部からの 力を比例限応力といいま す。


木を乾燥させる必要性は?

 木材は、細胞壁中の結合水が減少すると、前述のとおり強度を増しますが、それ以外にも、木材の収縮を生じたり様々な性質の変化を起こします。木材を乾燥して使用することは、次のようなことからも必要です。




含水率の高い木材を使用すると次第に乾燥し、製品に狂いや隙間ができる


木材は、含水率が低くなると強くなる

木材は、乾燥することによって重量が減少し、輸送や取り扱いが容易にな る


木材は、含水率が低くなると加工性や塗装性が良くなる



木材を接着して使う時、低い含水率にする必要がある

含水率の高い材は、シロアリや腐朽菌に侵されやすいので、含水率を低くする必要がある


JAS製品の水分(含水率)はどうなっているの?

 林産物の日本農林規格(JAS規格)にも、含水率の基準が定められています。日本農林規格で規程する含水率基準は、下の表のとおりです。


日本農林規格の含水率基準
日本農林規格含水率(%)
普通合板14
コンクリート型枠用合板
構造用合板
難燃合板
防炎合板
特殊合板天然木化粧合板12
特殊加工化粧合板13
単板積層材14
構造用単板積層材
構造用パネル13
集成材15
構造用集成材
フローリング単層フローリング人工乾燥針葉樹
人工乾燥広葉樹13
天然乾燥針葉樹20
天然乾燥広葉樹17
複合フローリング14
針葉樹の構造用製材 ※15,20,25
針葉樹の下地用製材 ※
針葉樹の造作用製材 ※15,18,20
広葉樹製材 ※10,13
枠組壁工法構造用製材 ※19
機械による曲げ応力等級区分を行う枠組壁工法構造用製材
枠組壁工法構造用たて継ぎ材
※は、乾燥表示のあるものに限る



まとめ

 木は生きものです。生きものである以上、自分が生存し種族保存のために多量の水分を含んでいます。従って、私たちが建材として利用する木材が水分(特に結合水)の影響を受ける特性は、必ずしも私たちにとって好都合なことばかりとは限りません。
 木は、木材となっても、水分の放出吸湿によって、大気中の湿度に応じた含水率(気乾状態)になります。これが、「木材は生きている。」と言われるゆえんです。木材を使用する際は、木と水分の関係を理解し、乾燥によって生じる狂いや割れ等私たちにとって不都合な性質を避けるため、気乾状態に近い製品を利用したいものです。そのためには、木材の含水率基準が示されている製品(たとえばJAS製品)を利用することです。
 住宅の購入は、一生の大仕事だと思います。含水率のわからない材を用いたばかりに、「予定外の出費を余儀なくされた。」と嘆いても後の祭りです。木材と水分の関係を良く理解しておきたいものです。




「大きな目小さな目」(全国版)(農林水産消費技術センター広報誌)1998年5月 第39号


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