住宅の構造材料の水分

 第26号では、住宅の構造について述べましたが、今回はその構造材料に使用される木材の水分に注目してみましょう。

 最近の木造住宅で構造材(柱、梁等)に水分を調整した乾燥材が使用されるようになりました。

 乾燥材のメリットは、施工後の木材の乾燥によりクロス(壁紙)の割れや開閉部の隙間等が発生することがないことです。以前にくらべ工期が短くなります。

 一方、未乾燥材を使用した場合、乾燥によるトラブルが聞かれます。今回は、構造材と水分(乾燥)の関係と乾燥材の知識について説明します。


木材に含まれている水分(含水率) / 木材の収縮 / 構造用の木材の乾燥の基準と仕様の基準 / 家の新築には乾燥材を!



1.木材に含まれている水分(含水率)


 丸太を製材した時、表面にさわっても乾いた感じの木材や、水がにじみ出そうな 木材などいろいろあります。
 木材市場及び木材問屋等に流通している木材も、乾燥材と表示してあるものを除くと、30%以 上の水分を含んでいます。建築時に水分多く含んでいた木材も自然に乾燥し、水分は概ね15%前 後になります。木材は乾燥して水分が約30%以下になると縮みはじめ、さらに表面に割れや曲が りなどが生じることがあります。

 木材の含水率は、次の式によって表され、通常の水分と違い100%を超える場合があります。

       木材に含まれている水分重量(g)
木材の含水率=──────────────────×100(%)
       木材に含まれている水分がなくなった時        の木材の重量(g)
	
表1 木材の収縮率
樹  種 含水率30%から15%に乾燥したときの収縮率(%) 比    重
含水率15%含水率0%
ス ギ3.51.10.03 0.360.33
ヒノキ3.51.50.05 0.410.37
アカマツ4.41.90.03 0.550.52
木材の人工乾燥(寺沢、筒本)より一部抜粋


2.木材の収縮


 一般に木材の収縮率は、製材(木取り)の方法によって異なり、図の長さ 方向が最も小さく、板目方向が最も大きくなります。また、同じ樹種内でも比重 により差が見られます。

〈木材の収縮の例〉

 含水率が30%以上で一辺が105mm角のスギ柱を施工し、施工後自然に乾燥 して含水率が15%になったとすると、どれくらい縮むのでしょうか。

 スギの板目材(T方向)が含水率15%まで乾燥したときの収縮率は、表1より 3.5%であるため、収縮量を計算すると
     105mm×0.035=3.5mm となり、したがって約3mm縮み、柱と鴨居の間に隙間ができます。

 なお、これとは逆に含水率が低すぎる(過乾燥)ものを、床板などに使用する と湿気を吸収し膨張して床が浮き上がることがあります。

 このように、建築時に乾燥材を使わないと


・施工後に接合部に隙間ができる(柱と鴨居の隙間など)
・施工後に接合部がゆるむ(接合部のボルトのゆるみ)
・釘の保持力低下、また、接着性能が低いため床鳴りがする
・クロスにシワや割れができる
・金具が錆びやすい
・柱などに割れが入る

などの不都合が起こりやすくなります。

 これに対して、乾燥材を使用すると


・施工後に木材の狂いが少なくなる
・材が腐りにくい
・未乾燥材よりも強度がある
・接着性や加工性等が向上する
・保温性が良くなる
・重量が軽くなり、運搬費用が安くなる

などの利点があります。


3.構造用の木材の乾燥の基準と仕様の基準


 構造用の木材(構造用製材)についてJAS規格では表2のとおり乾燥の 規定が定められ、木材表面に表示されています。
DはDry(乾燥)の頭文字で、この表示のないものは含水率が25%を超える木材 です。また、JAS規格の集成材及び構造用集成材は含水率15%以下となっています。


表2 日本農林規格(JAS)
品  名表  示含水率
針葉樹の構造用製材乾燥材 D2525%以下
D2020%以下
D1515%以下
集成材・構造用集成材 15%以下


 一方、住宅金融公庫融資住宅の木造住宅共通仕様書においても、構造材には乾燥材 (含水率19%以下)を使用することが推奨されています。



4.家の新築には乾燥材を!


 入居後に木造建築の構造材を修理すると手間も費用もかかり大変です。 これから住宅を建てる予定の方は是非、施工業者に乾燥材を使用するよう相談されて みてはいかがでしょうか。

 建築費用に占める木材の割合は意外に小さく、床面積延べ115uの建物の建築費 用が約2000万円とすると木材の費用は約160〜200万円です。このうちの構 造材(柱、梁等)すべてに乾燥材を使用しても、コストは構造材費用の10%増程度 ですみますので、入居後の修理費等を考えると経済的で安心です




図 木材の収縮の方向





「大きな目小さな目」(全国版)
(農林水産消費技術センター広報誌)
1996年7月 第28号


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