木材の性質

 木材はまことにおもしろいものです。例えば住宅などに使われている材料一つ一つを見ても決して同じものはありません。  それは樹種の違いや、産地により、生育している山の位置により、また、同じ木材の中でもその部位により様々な特徴、性質を持っているからです。  このような木材の構造的性質は長所でもあり欠点でもあり、これらの特徴を生かした加工、使い方をしていくことが必要です。


1.年輪の重み / 2.「いため」と「まさめ」 / 3.「しらた」と「あかみ」/ 4.木材の三つの方向




1.年輪の重み


木は無数の細胞が集合したものです。木は樹皮と材部との間にある形成層から細胞が分裂し、外側へと一年一年太って成長していきます。

 春から夏にかけての成長が速く、軟らかい部分(春材部)ができ、涼しくなって成長が遅い秋には、硬い部分(秋材部)ができます。この一年毎の繰り返し成長した部分が、木の横断面に同心円状の輪として現れ、これを年輪と言います。

 一般的に年輪のつまっている木材(数が多い、密度が高い)ほど強度があります。



2.「いため」と「まさめ」(板目と柾目)


 木を縦に製材した時、年輪に直角に製材した面は年輪が縦縞状に見え、この面を柾目面(柾目)と言います。年輪に沿って製材すると、年輪はタケノコ状の模様に見え、この面を板目面(板目)と言います。

 一般に柾目の材は板目の材に比べ、製材(木取り)する上で作業効率、歩留まりが悪く、幅の広い材が取りにくいのですが、板の両面の収縮差が小さく、狂いが僅かでかつ材面が美しいなどの長所があります。

 和室などの造作材(骨組み工事の後に施工される、長押、床板、敷居、鴨居、階段などの仕上げ工事に使用される材)では、2面が柾目面、1面が柾目面のものが使用され、柾目面が多いほど価格も高くなります。



3.「しらた」と「あかみ」(辺材と心材)


 ある程度太くなった木材(丸太)は、外側の部分と内側の部分とでは色や水分含量が違います。

 外側の色の淡い部分を辺材(へんざい、しらた)といいます。辺材は、樹液の流動や養分の貯蔵など植物が生育する上で必要な機能を持った細胞があり、生(なま)材時の含有水分も心材に比べて高くなります。

 内側の色の濃い部分を心材(しんざい、あかみ)といいます。心材は細胞としての機能が停止し、取り残された樹液などが変化して、色素や樹脂になり組織にたまっています。

 このような養分の有無、水分、成熟度などにより心材部分は辺材に比べ虫害を受けにくく、腐れにくいばかりでなく、耐久性があり、利用する上で喜ばれています。

 古い神社、仏閣のように1000年以上経ってなお建物を支え続けているのは、材料にヒノキ、ヒバなど耐久性の高い樹種の心材部分を使用しているからです。



4.木材の三つの方向


 木材の性質を調べていくと、軸方向でそれぞれ特徴をもっています。軸方向は、長さ方向(繊維方向)、半径方向(放射方向)及び接線方向の三つです。

 木材の組織は、上に伸びる幹と同じ方向に並ぶ長い細胞が、横に太る年輪をつくるため、それぞれの方向では性質がかなり違ってきます。

 例えば、長さ方向の圧縮や引っ張りには強いのですが、側面(半径の方向)からの圧縮などには長さ方向の10分の1くらいの強度しかありません。

 木造住宅では、強さを必要とするところには、長さ方向の強さを活かし、荷重が集中する圧縮部分には、クッション材の役目をする放射方向や接線方向の軟らかさを活かして木材が使われています。

 強度以外にも、熱や音に対する性質、伸縮率、加工の難易など、あらゆる性質が三つの方向によってかなり違います。これは工業材料などにはほとんど見られないことですが、木材はこれらの特徴が様々な方向で活かされています。

 また、この方向性の欠点を改良したものに合板、パーティクルボード、構造用パネルなどがあります




 木材にはこれらの性質のほかに、加工しやすい、軽くて強い、熱を伝えにくい、湿度を調整する、結露を起こさないなどの長所のほか、腐れ易い、燃えやすい、狂いやすい等の欠点もあります。

 私たちは、様々な木材の性質を上手に利用し、目的に合わせて使い分けてきました。これらの性質について今後、順次解説していきます。



「大きな目小さな目」(全国版)(農林水産消費技術センター広報誌)1999年11月 第48号


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