1.木材の「燃えしろ設計」
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木材が燃えるのは表面からです。木材は熱伝導率が大変低いことに加え、
断面が大きければ大きいほど表面の燃えあとが炭化した層となるために、
内部への燃え方はその分遅くなります。炭化層が防火層の役割も果たす
ためで木材内部への熱の伝導を抑えるのです。(図参照)
木材の表面から内部に向かって炭になっていくスピードは1分間に
およそ0.6〜0.8mmといわれています。この数値を参考にして、
たとえば火事になったとき、30分間その建物の強度を持たせようと
すると30分×0.8mmで24mm、火災時の安全を25mmと見て
、住宅の構造材の強度の構造計算をするというのが最近の設計法です。
これは「燃えしろ設計」と呼ばれるもので3階建て木造アパートや
体育館などの大規模建築物を設計する場合に主に取り入れられています。
現在、ほとんどの大規模木造建築物は構造材が集成材で作られて
います。集成材は自由な寸法を容易に得ることができ、高い強度性能
を有していることから火災に強い大規模木造建築物を造るうえで大切
な材料といえます。
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2.木造でも耐火建築
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これまで建築基準法では防火地域*に指定された市街地などでは、
用途、規模、階数などに応じて耐火建築物(鉄筋コンクリート造、
ブロック造、レンガ造)とすることが義務づけられていて
、木造建築物の建築は許されませんでした。
しかし、平成4年の同法の改正により柱や梁(はり)などの
主要構造材に対して表のような耐火性能が確保されれば準耐火
建築物として建築することができるようになりました。
これらの耐火時間以上耐えるための具体的な仕様については
建設省の告示で示されています。たとえば、階段を木製階段
とする場合、階段板の厚さ6cm以上とするか、厚さ3.5
cm以上としその裏側を石こうボードで被覆するなどが規定されています。
それら個々の部材に決められた施工仕様の条件を満たしていれば
、木造建築物でもコンクリート造などに準じた耐火性能を有する
準耐火建築物として、準防火地域*以下の指定地域に3階以下延
べ床面積1,500u以下の建築物を建てることができます。
ただし3階建共同住宅に関しては木造の場合には防火、準防火地
域を除いた地域でのみ建設が可能 となっており、その耐火性能も表の括
弧内のように一般の住宅よりも厳しい規定となっています。
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3.火災に対する安全性
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すべての木造住宅が上述の基準を満たしている準耐火建築物とは
限りません。視点を変えて、万が一自分の家で火災が発生した場合を考え、
その火災の進行を遅らせ被害を最小限にとどめる施工を考えてみましょう。
まず、木造住宅の場合は壁や天井など燃え抜ける危険性がある部分を石こう
ボードで覆いましょう。
壁や天井内部には断熱材をいれましょう。
これは断熱材が火災時の熱の伝わりを抑える役割を果たすためです。
最近では有毒ガスの発生しない断熱材も開発されていますから、こう
いった断熱材を使用する方が安全でしょう。
部屋(住宅)の気密性を高めると火災時に酸素の供給が少なくなるため
、火の勢いを抑えることができます。
壁と天井などのつなぎ目(取り合い部)から延焼することのないよう
に、その部分に無駄な空間を造らないような構造とすることも重要です
。この他、主たる構造部以外では、ドアやサッシなども木製が良いとい
われています。それは木製のほうがアルミドアやアルミサッシよりも火
に対して持ちこたえる時間が長いということからです。
また、いざ火災というときに安全に避難できることも重要です。
この点でも木製のドアであれば破壊が容易だということがあげられ
ます。大人であれば蹴破れますし、あるいは重量物を投げつけて壊
すこともできます。とにかく早く外に脱出することが可能となると
いうことなのです。
さらに、燃焼ガスの問題もあります。木材であれば、燃焼により一
酸化炭素は発生しますが、ビニール・プラスチック製品よりは有毒
ガスの発生は多くありません。こういった点についても木材は火災
に対して安全性の高い材料といえるでしょう。
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※ 防火地域・準防火地域
建築物の集合の度合いや地域の機能に応じて指定され、建物に一定の防火性能を要求されるのが防火地域の制度で防火、準防火、その他の地域の三地域に分けられており、大都市の場合はほとんどの場所で防火地域、準防火地域のどちらかの指定を受けています。
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表 準防火建築物の耐火時間
外壁 |
耐 力 壁 |
45分(1時間) |
非耐力壁 |
延焼のおそれのある部分 |
45分(1時間) |
上記以外 |
30分(30分) |
間仕切り壁 |
45分(1時間) |
柱 |
45分(1時間) |
床 |
45分(1時間) |
はり |
45分(1時間) |
屋根 |
30分(30分) |
階段 |
30分(30分) |
( )3階建共同住宅の場合
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「大きな目小さな目」(全国版)
(農林水産消費技術センター広報誌)
1997年9月 第35号
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