1.キノコとは
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キノコは、植物の根・茎・葉に相当する菌糸と、花や果実に当たる子
実体からできています。私たちは、この子実体をキノコと呼んでいます。
一口にキノコといっても、その形状は、種類によって様々です。
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2.キノコを学ぶには
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キノコ狩りをしたい。キノコを食べたい。こういう人は、
食用キノコを覚えたいとあせります。こういう人がキノコを見つけると、
まず名前を聞きます。
次いで「食べられるか?」の質問が飛んできます。「食用」と答える
と喜んで篭に入れ、「毒だ」というととたんに顔をそむけて投げ捨てます。
これでは、進歩がありません。「美味しいヤブシメジ(ドクササコの別名
)でも食らって出直してこい。」と言いたいものです。
食べられるキノコを覚えたいというのは人情ですが、キノコを学ぶには、
まず数の少ない毒キノコを知ることが近道です。そして、毒キノコを通し
てキノコを見分けるポイントを学ぶことが大切です。
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3.有毒キノコ
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キノコの毒性は、おおむね消化器系に作用するものと、
神経系に作用するものに分けられます。しかし、毒成分が解明されてい
ないものもあります。
最も恐ろしい毒キノコは、致命的な毒性を持つキノコです。次に、
警戒すべき毒キノコは、誤食頻度の高いキノコです。
[有害キノコ]
“家を食うキノコ”の存在をご存知でしょうか。その名を「ナミダ
タケ」といい、住宅の土台まわりを腐らせる恐ろしいキノコです。この
キノコに財産を奪われて、涙を流しても後の祭りです。
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4.キノコの毒性
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一般的に、食後間もなく症状が現れるものは、毒性が弱く、
一時は苦しみますが命に別状ありません(ツキヨタケ・イッポンシメジ
・カキシメジなど)。
これに対して、食後10時間ほど経過してから症状が現れるものは、
毒成分が吸収され、肝臓・腎臓・心臓などを侵すため、致命傷になります(
ドクツルタケ・コレラタケなど)。
ドクササコの中毒は、潜伏期間が3〜5日にも及び、大人でも七転八
到する激痛に1ヶ月余りもあえぎ続けねばならず、たとえ命に別状なく
とも、残酷という点では致命的な毒キノコに匹敵します。
シャグマアミガサタケは、西洋では解毒処理を行い食用としていますが
、猛毒なので中途半端な知識で口にすることは自殺行為です。
また、キノコの中には、アルコールと一緒に食べると中毒するものもあ
ります(ヒトヨタケ・ホテイシメジなど)。
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5.自殺行為にも等しい誤った鑑別法
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キノコに食毒の簡単な鑑別法があったらと、誰もが思うことです。
各地に語り継がれている見分け方は、そんな思いが凝縮した夢にすぎません。
まともに信じて実行したら、命がいくつあっても足りません。
“食用キノコと毒キノコを見分ける方法”、そんな重宝な鑑別法やトラの巻は無い
、という事実をまず認識すべきです。命が惜しければ、迷信と縁を切ることです。
◆誤った鑑別法
・縦に裂けるキノコは食べられる
・毒キノコは美しく、食べられるキノコは地味な色をしている
・匂いがよければ食用、悪ければ毒
・ナスと一緒に煮れば中毒しない
・煮汁に銀のスプーンを入れて黒変しなければ、毒タケでない
・虫やナメクジが食べているキノコは食べられる
・油で炒めれば毒が消える
・塩蔵すればどんな毒タケも食べられる
・ネコに試食させてから食べる
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6.誤食したら
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キノコを美味しく召し上がった後、胃のムカムカ(前駆症状)を自覚し
たら、大当たり。キノコ中毒です。一刻も早く指を口に差し込んで、
食べたものを全部吐き出すよう数回これを繰り返して下さい。
ここで、せっかく食べたものを吐き出すなどもったいないなどの貧乏根
性は、あっさり捨てることです。また、自信過剰も、三途の川を渡ること
になるので禁物です。有毒成分が体内に吸収されてからでは遅いのです。
応急措置は、食後早ければ早いほど効果が上がります。応急措置を取った
後、医者のお小言を頂戴しましょう。
なお、前述の応急措置は、自然に親しみ、食い意地の張っているものに
とって、是非とも知っておかねばならない常識です。
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有 毒 キ ノ コ 一 覧 表
有毒キノコ |
毒 性 |
誤食頻度 |
ドクツルタケ | ◎◎◎ | ** |
シロタマゴテングタケ | ◎◎◎ | ** |
タマゴテングタケ | ◎◎◎ | * |
シャグマアミガサタケ | ◎◎ | * |
コレラタケ | ◎◎ | * |
ニセクロハツ | ◎◎ | * |
ニガクリタケ | ◎ | *** |
アセタケ | ◎ | * |
ドクササコ | ○○○○ | *** |
テングタケ | ○○○ | ** |
ベニテングタケ | ○○○ | ** |
ツキヨタケ | ○○ | **** |
イッポンシメジ | ○○ | **** |
クサウラベニタケ | ○○ | **** |
マツシメジ | ○○ | **** |
カキシメジ | ○○ | **** |
ハナホウキタケ | ○ | *** |
キホウキタケ | ○ | *** |
コガネホウキタケ | ○ | *** |
シビレタケ | ○ | ** |
オオワライタケ | ○ | ** |
ワライタケ | ○ | * |
(注)○印は有毒成分を、
◎印は致命的な猛
毒成分を示す。
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「大きな目小さな目」(全国版)
(農林水産消費技術センター広報誌)
1995年9月 第23号
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