住まいと化学物質(5)

 これまで、住宅の室内空気汚染として「その原因となる化学物質の特性」・「化学物質の種類(特にホルムアルデヒドについて)」や、住宅の建築、リフォームにあたっての「化学物質の低減方法」・「どんな材料(建材)を使用するか」について解説してきました。今回は、まとめとして住宅建築後の「生活上の留意点」についてお話します。


ホルムアルデヒドとはどんな物質なのか? / なぜホルムアルデヒドが発生するのか? / ホルムアルデヒドの効果的な対策は?




入居直後の留意点


日常生活での留意点

 このシリーズでお話してきたように、建築、リフォームにおいて使用する建材・施工材の選択や施工方法、施工管理、工期設定に十分な配慮が行われなかった場合、新築後やリフォーム後しばらくの間は、優先取組物質の放散が高い場合があることが予想されます。臭いがある場合や目がチカチカする場合には、換気することが有効です。換気は複数の窓を開けるとともに、室内ドアなども開放して通風を確保すると効果的です。ただし、窓を開けると同時にその窓の近くの換気扇を回すと、空気が局所的に通過するのみで、十分な空気の循環が起こりにくい場合があるので注意が必要です。特に夏場など高温で湿度の高い時期は、建材・施工材からの優先取組物質の放散が促進されますので、換気の回数に配慮してください。

@外界条件(気温、外気の質)にもよりますが、日常生活において窓の開放による自然換気を積極的に取り入れて下さい。 A給気口がある場合は、できるだけ開放状態にしてください。 B室内ドアを開放して通気経路を確保するよう心がけてください。 C窓を閉め切っている場合は、例えば浴室、トイレ、台所などの換気扇をときどき運転して換気量を確保してください。 D数日間にわたって不在にした場合などは、特に帰宅直後の換気が大切です。 E生活の中では建材・施工材以外にも、室内空気の汚染源となる可能性があるものがたくさんあります。それらはできるだけ持ち込まない、あるいは使用にあたっては換気に充分注意してください。(表1参照)


建材、施工材以外での優先取組物質の発生源となる可能性があるもの (出典: EPA,Preliminary Indoor Air Pollution Information Assessment Appendix A Report
No.EPA-600/8-87/0142-18.19,WashingtonDC(1978)
EPA,Introduction to Indoor Air Quality A Referencs Manual,EPA,1997 July
EPA/400/3-91/003,p.p21-26,table2-7を参考に作成)
(注)例示した製品が右欄に示した優先取組物質を必ず含んでいるわけではありません
発生源含有する可能性のある優先取組物質
洗浄剤ホルムアルデヒド、トルエン
塗料及び関連製品トルエン
農薬など
(殺虫剤、防ダニ剤、防虫剤など)
クロロピリホス、アレスリン、ベルメトリン、フェニトロチオン、フェンチオン、マラチオン、ダイアジノン
粘着/接着剤
(多目的接着剤、ゴム用接着剤など)
トルエン、キシレン、ホルムアルデヒド
化粧品など
(シャンプー、香水、ヘアスプレーなど)
ホルムアルデヒド
自動車用品
(オイル、ガソリン、ワックスなど)
トルエン、キシレン
趣味用品など
(写真用薬剤、専門接着剤など)
トルエン、キシレン、ホルムアルデヒド、可塑剤(DEHP)
家具、衣類など
(家具、カーテン、マットレス、カーペットなど)
ホルムアルデヒド、可塑剤(DEHP)
開放型燃焼機器などホルムアルデヒド
煙草の煙ホルムアルデヒド



症状をおぼえた場合


相談窓口

 「強い臭いがする」、「目がチカチカする」、「喉に渇きを覚える」などの症状をおぼえた時には、すぐに設計者、施工者へ相談し、発生源の確認を行ってもらい、適切な換気の方法などについてアドバイスを受けてください。
 なお、これらの手法を講じても症状が改善されない場合には、専門の医師にご相談してください。

住宅の室内空気汚染に関する相談には、その内容に応じていくつかの相談窓口がありますので、表2を参考にしてください。

資料: 「室内空気汚染の低減のためのユーザーズ・マニュアル」及び「室内空気汚染の低減のための設計・施工ガイドライン」(平成10年3月、(財)住宅・建築省エネルギー機構)


表2 住宅の室内空気汚染に関する相談窓口
相談窓口(法人名) 内容電話連絡先
公庫各支店工業業務課
(住宅金融公庫)



ホルムアルデヒド放散量に係わるJIS、JAS規格の紹介
都道府県の住宅センター等


住宅に係わる相談
農林水産消費技術センター
(農林水産省)

木質建材の品質・安全性テスト、品質や表示の相談、PL方の原因究明等
全国保険所


健康全般に関する相談03-5640-0901
住宅部品PLセンター
(ベターリビング)
住宅部品のPL法に係わる相談
(相談時間10:00-12:00,13:00-17:00)
0120-668-066
日本合板検査会


木質建材のホルムアルデヒド等に関する測定及び品質表示に関する相談03-3591-7438
建材PL相談室
(日本建材産業協会)



建材全般のPL法に係わる相談03-5640-0901
化学製品PL相談センター
日本化学工業協会)


化学製品のPL法に係わる相談及び化学物質の安全性に係わる相談(相談時間9:30-16:00)0120-886-931
PL相談室
(日本塗料工業会)


化学物質の健康への影響、塗料に関するPL法に係わる相談03-3443-2011
住宅安全対策委員会
日本しろあり対策協会)



防蟻剤及び防蟻処理に関する相談03-3354-9891
インテリアPLセンター
(壁装材料協会)



インテリア材料のPL法に係わる相談03-3403-7897
集成材相談室
(日本集成材工業協同組合)



集成材の化学物質放散に関する相談03-3434-6527
健康合板相談窓口
(日本合板工業組合連合会)



普通合板のホルムアルデヒド放散量基準値、放散量に関する相談03-3591-9246
健康住宅相談コーナー
(健康住宅推進協議会)
健康住宅診断(室内空気汚染、床下腐朽、防蟻)の相談等06-6390-8561
健康住宅普及協会室内空気汚染に関する相談06-6441-0181
(注) 1  健康への影響に関する相談
  例:化学物質の健康への影響、健康被害が生じた場合の対応について
2  健康に配慮した住宅の建て方、購入の仕方に関する相談
  例:建材・施工材の選定、換気について、室内の濃度測定及び測定機器、住まい方等、
    入居者に対するアドバイスについて
3  建材に関する相談
  例:建材・施工材の選定、化学物質放散量、放射能測定について
4  健康被害が発生したときの対策に関する相談
  例:健康被害が発生した場合の住宅における具体的な対策等について、裁判外紛争処理
    について




「大きな目小さな目」(全国版)(農林水産消費技術センター広報誌)1998年9月 第41号


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