住まいと化学物質(4)

 「木とくらし」も今回で30回目になりますが、これからも木、住まい、暮らし、環境などをテーマに分かりやすくお話していきたいと考えています。
 今回は、これまでの話を含め「ホルムアルデヒド」についてまとめてお話しします。


ホルムアルデヒドとはどんな物質なのか? / なぜホルムアルデヒドが発生するのか? / ホルムアルデヒドの効果的な対策は?




ホルムアルデヒドとはどんな物質なのか?

 VOC(揮発性有機化合物)と呼ばれる物質が室内に広がり健康をそこなうおそれがあるということはこれまでも述べてきましたが、ホルムアルデヒドも室内空気の汚染物質のひとつで、話題になっている物質です。

 ホルムアルデヒドの分子構造はH-CHO(図参照)、酸素を含む単純な有機化合物です。強い刺激臭があり、水に非常に溶けやすい性質があります。ホルムアルデヒドが一定の割合で水に溶けた状態のものをホルマリンと呼び、殺菌剤、消毒剤、防腐剤などとして使用されます。ホルムアルデヒドの人体への影響は、その濃度や個人の感受性にもよりますが、一般的には空気中の低い濃度(0.2ppm程度)では臭気を感じる程度ですぐに慣れて感じなくなりますが、濃度が高くなるにつれて目・鼻の不快感(1〜2ppm程度)、さらには喉・鼻の苦痛や呼吸困難などの症状があらわれます。

図 ホルムアルデヒドの構造
図 ホルムアルデヒドの構造


なぜ、ホルムアルデヒドが発生するのか?

 では、どうして室内の空気にホルムアルデヒドが含まれてしまうのでしょうか。様々な原因がありますが、その一つとして住宅用建材に使用されている接着剤に問題があると考えられています。
 住宅用建材に使用されている接着剤の中に「ホルムアルデヒド系接着剤」と呼ばれる種類があります。この種類の接着剤は石油化学物質とホルムアルデヒドから作られた樹脂を主成分としていて、接着する能力が非常に優れており、作業性が良いため広く使用されています。この接着剤に硬化剤を添加すると、ホルムアルデヒドが仲立ちとなってより強固に接着されます。

なぜ化学反応によって接着、硬化した接着剤からホルムアルデヒドが室内に出てしまうのでしょうか。詳しく説明すると少々話が難しくなりますので、ごく簡単に発生のしくみについて説明しましょう。

 発生の主な原因は、接着剤中の余剰なホルムアルデヒドが空気中へ放散するためと考えられています。接着作業直後が特に放散するので、新築住宅でホルムアルデヒドによる苦情が多いのはこのためと考えられます。

 このほかに、室内中および木材中の水分が影響して、徐々に樹脂の加水分解がおこり、ホルムアルデヒドが遊離・放散するためと考えられています。 高温多湿のときに加水分解が促進されるので、築後、数年を経た住宅でも、夏場や冬の暖房の入った部屋でホルムアルデヒドの量が増加すると言われているのはこのためでしょう。

 これら以外にも様々な発生原因があると考えられています。


ホルムアルデヒドの効果的な対策は?

 それでは室内に放散するホルムアルデヒドに対してどんな対策があるのでしょうか?

 対策はいろいろとあるようですが、最も簡単で費用もかからず効果が得られる対策はこまめに「換気」をすることです。

 その際、押入、家具など気になるところの扉をすべて開けて換気するのがよいでしょう。とくに新築時や高温多湿時にはこまめに換気することで相当の効果が得られます。

 最近、住宅メーカーなどでは「低ホルムアルデヒド接着剤」、または「非ホルムアルデヒド接着剤」を用いた住宅を次々と商品化しています。また、住宅資材を製造するメーカーなどもこの問題に対して積極的に取り組んでいますので、今後ホルムアルデヒドに関する問題は減少していくものと思われます。



「大きな目小さな目」(全国版)(農林水産消費技術センター広報誌)1999年1月 第43号


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