木材の種類(構造用パネル)

林産物のJAS規格のシリーズも,今回で7回目になります。 今回は,構造用パネルの規格についてご紹介します。


構造用パネルとは / 構造用パネルの主な特徴 / 品質の基準 / JASマークと表示例 / おわりに



1 構造用パネルとは


 構造用パネルとは,木材を砕いた削片に耐水性の高い接着剤を加えて加熱 プレスし,パネル状に成型したもの,またはこのようなパネルの両面に単板( Veneer:ベニヤ)を積層接着したもの(コンポジット・ボードなどと呼ばれます。) で,主に建築物の構造用耐力部材として用いられるものをいいます。
 北米では,数センチ〜10センチ程度の幅および長さをもった薄い削片( 正方形状のものは「ウエファー」,長方形状のものは「ストランド」など と呼ばれます。)を用いて,ウエファー・ボードやオリエンテッド・スト ランド・ボード(以下「OSB」といいます。)と呼ばれる製品が生産さ れており,ツーバイフォー住宅をはじめとした木造建築物の壁・屋根・床 下地などの構造耐力用面材として,構造用合板と同様の用途に使用されて います。構造用パネルのJAS規格はこれらの製品を主な対象とした規格 で,北米のJAS認定工場で生産されJAS表示を付された製品が日本に も輸入されています。
 なお,構造用としての利用の他にも,梱包材料として,あるいは木材の 削片が重なりあった表面 の模様をデザインに活かして,店舗など特殊用途での内 装材料や,テーブルなどの家具に利用され る場合もありますので,建築現場以外 でもそれとなく目にされたことがあるかもしれません。



2 構造用パネルの主な特徴


(1) 北米で生産される構造用パネルは,一般的に製材や合板の材料としては 適さないアスペンなどの樹種が用いられており,小径の低質木材資源を有効に 利用する観点からは合理的な材料です。削片に砕いた後にパネル化する ことで,細い木材からでも幅の広い面材料を得ることができます。

(2) 天然の木材の持つ品質のバラツキが,削片の状態まで一度細分化され, 再び接着剤を用いて成型されることにより分散・均質化され,品質の一定化さ れた製品が生産できます。

(3) 構造用パネルとして使用されている製品の主流を占めるOSBは,長方 形状の薄い削片の繊維方向を,パネルの表層と中心層で直交するように配列す ることによって,単板を直交させて貼り合わせた合板と同じような効果を持た せており,長さ方向の強度性能を高めるとともに,幅方向の寸法安定性にも配 慮しています。

(4) 製品の構成上,同等の強度を有する合板よりもやや厚みがありますが, その反面,断熱性は高くなり,省エネルギー製品としての特性もあると言えます。 このような特性は屋根下地などで,発砲スチロールなどと複合した製品とし ても一部で活用されています。 



3 品質の基準


 構造用パネルのJAS規格には,構造用の耐力部材として主に 壁下地などに使用される製品に要求される品質性能として,接着 の程度,含水率,曲げ性能,吸水膨張性,釘耐力性能,寸法精度 ,外観の品質,ホルムアルデヒド放散量(Fc0,Fc1又はFc2の 表示をする場合)などの基準が設定されています。これらの基準 の中には,北米に比べて多湿で雨の多い日本の気候も勘案し,厚 さ膨張や曲げ性能など吸水による品質変化を考慮した基準や試験 項目が取り入れられています


4 JASマークと表示例


(1)JASマーク

 単板積層材および構造用単板積層材のJASマークは図2及び図3のとおりです。  単板積層材(造作用)の等級は表面の品質により1等または2等で表示されます。 ただし,表面に化粧加工を施したものには等級区分はありませんので等級が記載されません。  構造用単板積層材の等級は強度性能などにより特級,1級または2級と表示されます。
図1 構造用パネルのJASマーク 図2 実際の表示例

 構造用パネルの等級は,曲げ性能(常態曲げ 試験および湿潤曲げ試験 による強度性能)に応 じて1〜4級に区分されますが,厚さによって 等級が概ね決まっ てきます。OSBの場合,等級と一般的な厚さの関係は下表のとおりです。

表 等級と一般的な厚さの関係(OSB)
等級 一般的な厚さ
4級
3級
2級
1級

9.0mm, 9.5mm,10.5mm,11.0mm
11.0mm,11.5mm,12.0mm,12.5mm,14.5mm
15.0mm,15.5mm,16.0mm,18.0mm
18.0mm,18.5mm,24.0mm,28.0mm
住宅金融公庫融資住宅
 「枠組壁工法住宅工事共通仕様書」付録より

 壁下地としては4級,屋根下地としては3級,床下地としては2級以上のものが 一般的と考えられますが,現状では壁下地への利用が多いようです。
 なお,ツーバイフォー住宅については,建設省(現国土交通省)の告示により, 壁・床・屋根下地などの部位と構造用パネルを張り付ける枠組材の間隔に応じ, 使用できる等級が示されています。

(2)表示例

 構造用パネルのJAS製品にはJASマークとともに,以下のような表示 事項が記載されます。

品  名

寸  法

製造業者
構造用パネル

9.5×910×1,820mm

○○○○

○○○○構造用パネル工場



5 おわりに


 構造用パネルは,資源を有効に利用したパネル状の木質建材 で,主にツーバイフォー住宅などの構造用耐力下地材として,構造用合板とともに, それぞれの特徴を活かして使い分けられています。
 現在JAS格付されている構造用パネルは,北米からのOSBを中心とした輸入 製品だけです。国産の間伐材などの有効利用ということが考えられますが,山から の伐り出しにかかるコスト,量の安定的な確保などがネックとなっていると言えます。
 もちろん今後の木材資源の動向とともに条件さえ整えば,JAS格付された国産 の構造用パネルも現れるかもしれません



「大きな目小さな目」(全国版)
(農林水産消費技術センター広報誌)
2001年1月 第55号


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