木炭の利用について考える

 かつては家庭用燃料、暖房用燃料として大量に利用されていた木炭も、電気、ガス、石油等の普及により使用量が激減してしまいました。
 しかし、最近では湿度調節、脱臭、水の浄化、鮮度保持、土壌改良など、木炭の組織構造から来る特性を利用した、グルメ志向、健康志向からの木炭の使用が、私たちの身の回りで増えつつあります。

 そこで、木炭の性質と利用方法について、また、木炭の種類による違いなどについてまとめてみました。


木炭の性質と利用 / 木炭の種類



1.木炭の性質と利用


 木材の組織は図1のように小さなパイプの集合体(多孔質)で、そのパイプ の太さはオングストローム(百億分の一)から、ミクロン(百万分の一)単位です 。木材を窯で炭化すると容積は三分の一くらいになりますが、木材と同じ形の構造 を残しています。

木炭のこの微少のパイプ状の多孔質部分に様々な物質を吸着、脱着することを利用し て様々な用途に用いられています。

@湿気・臭気の除去

 空気中の湿気を吸脱着することを利用して、湿度が高い押入、下 駄箱、壁、床下などの除湿・調湿に用いられます。また、冷蔵庫、食器 棚、流しなどに置くと、悪臭を吸着・分解します。なお、使用に際して は、時折乾燥させる程度で取り替えの必要はありません。

A水の浄化

 汚染物質を吸着して河川を浄化するのに用いられます。また、 水道水を木炭粉でろ過することにより、不純物や水道の殺菌に使用さ れた塩素化合物を吸着し、残存塩素量が0.1ppmくらいに減少し、臭気 がなくなります。
 さらに木炭は2〜3%のミネラルを含み、その40%はカルシウムですから、 木炭のミネラルが加わった、おいしい水となります。

B野菜の鮮度保持

 木炭は、エチレンガスやアンモニアガスも吸着するため、冷蔵庫での 野菜や果物などの鮮度保持に役立ちます。

C炊飯時に

 白炭を入れてご飯を炊くと、ふっくらとおいしく炊けるといわれています。

Dお風呂に

 木炭を木綿の袋に入れて風呂に入れると、木炭のアルカリイオ ンが作用して、肌がすべすべし、湯あかも分解し、家庭で温泉気分を味わ うことができます。

Eその他

 電磁波など木炭の持つ電気的特性を生かした木炭枕の利用も考え られています。



2.木炭の種類


木炭は製炭法(焼き方)、用途、品質、産地などにより分類されます。

 焼き方の違いにより分類すると、黒炭と白炭に分けられます。この特徴を表にしました。

 黒炭は煮物などに使われ、白炭はウナギのかば焼きや焼き鳥、ステーキなどの焼き物に使 われます。備長炭は白炭の代表的なものです。

 黒炭と白炭の燃焼時間と燃焼温度の関係は図2のとおりです。



表 黒炭と白炭の特徴
種類黒炭白炭
主な産地岩手県、北海道和歌山県、宮崎県
使用樹種カシ、ナラ等ウバメカシ、ナラ、ブナ等
炭化温度600〜700℃約1000℃
製  法炭作りの最後に、窯を密閉して火を消して作る。 炭焼きの終わりに空気を入れて窯の中のガスを燃やし、真っ赤な木炭を引き出し、 灰と粘土を混ぜた消粉をかけて作る。
炭の状態黒く、木炭には皮(樹皮)がついているものがみられる。
切り口の横断面には、放射状に割れ目がみられる。
皮がなく、木炭の表面に灰が少し付いた灰白色
切り口、折れ口は光沢があり艶がある。
切り口の横断面には、放射状の割れ目はみられない。
炭の特徴 柔らかく、鋸で切断可能。
爪で傷が付きやすく、手などが黒くなりやすい。
硬く、ダイヤモンドカッター(グラインダー)で切断する。
爪では傷がつかない。
燃え方 火つきがよいが、日持ちが悪い。 火つきは悪いが、日持ちがよい。
調理の特性 煮物に適する。 焼き物に適する。


「大きな目小さな目」(全国版)
(農林水産消費技術センター広報誌)
1996年5月 第27号


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