は じ め に

 私たち日本人は、太古から木との関わりが暮らしに結びついています。

 樹木から食物や薬を採り、また生活用具を作り、住宅を建てるというように、その利用は多岐にわたっています。

 今日においても身近な家具調度品、楽器など、住宅では柱、土台、床板、壁材など。昨今の住宅着工の半数近くが木質系住宅です。

 また、これ以外の住宅を含めて現在の住生活は質から、さらに快適な暮らしを楽しむ時代になりつつあります。

 しかし、私たちは住まう住宅の機能、暮らしをとりまく木質材料、木製品をどこまで理解しているでしょうか。

 農林水産消費技術センターでは食品の他に木材加工品に係る業務も行っております。

 このコーナーでは身近な木材とそれに係る住環境、さらには緑や環境の問題も含めて、次のような内容を取り上げます。


くらしの材料 / 木材の特性と加工材 / 住宅の機能 / 住まいの侵入者 / 快適に住むために



1.くらしの材料


 木材は人にやさしい材料であることがよく知られています。

 木製品のはだざわりの良さや、木造住宅などで感じられる香り、木目、 手触り、さらには木材に囲まれた心地よさなどは、人間の五感を通じ体験 するわかりやすい例です。

 しかし鉄、コンクリート、石、ガラス、プラスチックなどそれぞれの良 さがあり、適材適所で使用されています。

 そこでこれらの材料と、人のくらしとの関係を科学的に取り上げます。


2.木材の特性と加工材


 木材には美観、強度、耐久性等の特性があり、これらは木の種類によ って異なります。住宅を建てる上で、柱にはヒノキ、梁にはマツ、土台には クリを、と言ったように古来より経験的に確立している特性が現在も活かさ れています。

ところが、今日では資源の枯渇、原木の高騰などにより必要な材料が手に入 らないことがままあります。そこに登場したものが、木材を切削・乾燥・接着 ・加工・塗装・薬品処理などを施した各種の加工木材です。これらの科学技術 が産んだ材料の特性をお知らせします。



3.住宅の機能


 住宅は非木質住宅、木造住宅に分けられます。構造的にみると、例えば木 造住宅には軸組工法、2×4工法(ツーバイフォー)、丸太組工法など様々な建 築工法があります。

その概要を知るには住宅メーカーのパンフレット等が情報源となりますが、使われ ている材料、工法の長所、短所などを知る機会はあまりないと思います。そこで工 法の特徴を解説します。



4.住まいの侵入者


シロアリ・ヒラタキクイムシのように木材を食害する昆虫は彼らの生態や木 材の特性、住宅の構造等を知ることにより、早期の発見や予防に対処することが 可能です。居住空間をすみかとするダニ・チャタテムシ・クモ等は私たちがだす 塵や埃をもとに一つの生態系をつくっています。

 虫ばかりではありません。住宅の結露や水漏れを好環境とし、栄養源とするキ ノコもあります。気味悪がったり、安易に薬剤を散布する前にこれらの生態を勉 強してみましょう。



5.くらしと森林


日本の国土面積の約三分の二は森林で、古来、日本人は暮らしや信仰の面 で森林と深くかかわってきました。 そして現在では森林のもつ多様な機能


・水源を保つ
・気候をやわらげる
・災害を防止する
・レクリェーション基地
・貴重な遺伝子源としての豊かな生態系
などが注目されています。ここでは、森林の現状と問題点、さらには今日的な 役割までも考えていきます。



6.快適に住むために


 住宅はより快適性を求めて大きく変わってきています。高齢化社会 に応じ、床に段差をなくす、廊下を広くする、2、3世代住宅などお年 寄りを配慮した家づくり、土地を有効に利用した木造3階建て住宅の普 及などが進められています。
 住宅の安全性、耐久性、機能性、またやすらぎのある住まいについて考えてみます。



「大きな目小さな目」(全国版)
(農林水産消費技術センター広報誌)
1994年1月 第13号


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